ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない
「それと生い立ちを記事にしようとしているんですか、その記者は……」
「そこと取引しようと思う。お前を前妻の娘と公表する権利をそこの出版社独占で与える代わりに、お前の母親のことを書かないと約束させる。亡くなった前妻の娘だけにさせるんだ。つじつまがあわない部分はこちらで適当に脚色する」
百合は震えはじめた。神楽は彼女の手を握ってやる。
「それはそうとしても、堂本コーポレーションは黙っていないでしょう」
「ああ。実は社長は面識があるのでね。この間電話で話した。それで、堂本のことについても記事を書かせないようにあちらの会社で圧力をかけるらしいが、うまくいかない可能性もあるんでね。社長はお前の事務所の援助を打ち切る予定だそうだ。関係を探られるのが嫌なんだろう」
神楽は予想通りの展開になったとため息をついた。百合を見ると顔色が悪い。神楽は心配して百合を部屋から出した。