ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない
後で話をまとめて教えると言ったのだ。百合は嫌だと言ったが、こんなところを他の人に見られたらそれこそ噂になりかねないのでと諭して、部屋を出させた。
「堂本との付き合いも伏せさせることができますか?」
「それはわからんな。堂本の力次第だ。俺は別にかまわん。あそこの御曹司は非常に優秀で有名だ。娘と噂になるのはかえってこちらには好都合なくらいだ。あの父親は嫌がっているがな。まあ、いわく付きの娘を大事な跡取りの嫁にしたくはないだろう。しかも伸び盛りのピアニストときてる。大企業夫人の仕事が出来ないだろうしな」
「百合を守らねばなりません。言いたくありませんが、彼女はあなたを許していない。わかっていますよね?避けられている理由ぐらいは……」
「お前、ずいぶん偉そうな口をきくな。そんなことお前に言われることではない。首にしてやろうか」
「……私を首にしたと知ったら、百合は口もきかなくなると思いますよ」