ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない
「とにかく、支援者の前でピアノを弾かせて、娘であると公表する。そして、堂本の代わりに俺が支援してやる。どうだ?悪い話ではあるまい」
神楽は本当のことが記事になれば庇いきれないと分かっていた。この父親の言うとおり、母親のことを隠して前妻の子とするのが一番いいのはわかる。とりあえず、弾くと言ってくれるように持って行くのが自分の仕事だと諦めた。
「わかりました。返事はいつまでに?」
「やるしかないのに返事も何もないだろう。俺の娘と言われるのは悪いことじゃない。堂本のためにもやるべきだ。堂本が記事を押さえられなければ、このままでは迷惑がかかるだろう」
「わかりました。支援者の会はいつ?」
「来週だ。週末を予定している。また連絡する。頼んだぞ」
そう言うと、秘書が迎えに来て、慌ただしく帰って行った。