ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない
「百合はしゃべるとマイナスなことばかり言う。俺を愛してるってそれだけ言ってろ。それ以外口にしたらキスするぞ」
「……黎、愛してる」
もう言葉はいらなかった。ふたりはむさぼるようにお互いを求めた。
翌日、大学へ行っている間に神楽と黎は会った。
「堂本。資本提携を破棄したいという社長からの意見書が届いている。うちの代表は目を通していて、違約金の支払いなどきちんと応じてくれることを確認して、契約解除を受け入れるということだった」
「……その件だが。とにかくすまない。俺の力不足だ。だが、百合への援助は俺の個人資産でやるつもりだ」
「堂本。実は色々あって百合の父親が今後後ろ盾となって資金提供すると言っている。事務所ではなく、おそらく百合本人にだけかもしれないが……」