ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない
「……百合から少し聞いている。今週末、後援会で弾くらしいな」
「ああ。ようやく了解してくれた。そうでもしないと、いらぬ腹を探られかねない。父親の言いなりになるのが嫌なのはわかるんだが、背に腹は代えられないんだ」
百合が泣きながら告白してくれた夕べのことを黎は思い出すだけで辛かった。
「支援者の前での演奏を含め海外公演でも百合のことをよろしく頼む。何かあれば言ってくれ。堂本の海外支社もあるし、助けられる」
神楽は堂本が百合を手放す気がないのを改めて認識した。
「堂本、お前……親父さんからかなり交際反対されてるんだろ。今回の契約解除もそうだ。百合のことをお前の父親が許すはずない。どうする気なんだ」
「それこそ心配無用だ。百合は俺が守る。百合自身は何も悪くないのに、親のせいで俺との付き合いまで邪魔されるなんて許されていいことじゃない」