ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない

 「……は?何の契約書でしょうか?」

 「とにかく、ここを片づけて、いや、お前ちょっと入れ。そこを閉めて鍵をしろ」

 柿崎は怖かった。何で鍵?

 「おい、勇。大丈夫だ。すまん、驚かせたな」

 普通の黎に戻った。ため息を吐いて、黎を見る。言われたとおりにしようと諦めた。

 机を直し、向かい合って座る。机の端に傷が付いている。倒したときにパソコンで付いたのかもしれない。ため息しか出ない。柿崎は言われたとおり、契約書のひな形を出して確認する。

 「黎様。どういった契約書になりますか?」

 黎は怖い顔をして笑っている。いったいなんだ?柿崎は見たことのない彼を刺激しないよう静かに見ている。
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