ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない
「お帰りなさいませ、栗原様」
神楽はびっくりして、百合の前に出た。
「あなたは確か、堂本の……」
「はい。堂本コーポレーションで黎様の側近として働いております、柿崎と申します」
頭を下げて、名刺を渡した。ふたりはその名刺を目にした。
「堂本から頼まれてきたのか?なんだ?噂になっているから君をよこしたんだな」
柿崎は噛みついてくる神楽を無視して、百合に向き直ると言った。
「栗原様。黎様から最後に提案があるので、マンションへ来て欲しいとのことです。この後お送りしますので、よろしいですか?あと、お疲れでしたら明日以降そこでお目にかかるので今日はお一人で休んで下さってかまわないとのことでした」