ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない

 百合は黙っていた。黎の考えが読めなかったからだ。

 「百合。失礼にもほどがある。疲れて戻ったところを待ち伏せされて。すぐに断れ。家へ送るから……」

 百合は神楽に言った。

 「……大丈夫です。遅かれ早かれ話し合う必要があります。メールの返事が来なかったので、ここに来ているのではないかと実は思って帰ってきました。わかりました。行きます」

 「百合!」

 「神楽さん。お疲れ様でした。色々ありがとうございました。あさって事務所で会いましょう」

 そして、百合は柿崎の方を見た。
 
 「では柿崎さん、お願いします」
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