ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない
交渉
黎は父へこのことを話す前に、母に報告したかった。
次の日。黎はイギリスの時差を考えてあちらの夜に電話をした。母の声を聞くのは久しぶりだった。
「母さん。身体の具合はどう?」
「黎。元気よ、心配かけてごめんなさいね」
「今日は話したいことがあって電話したんだ。今、大丈夫?」
「ええ、もちろん。愛する息子との電話より大事なことなんて私にはないわ。やっと連絡くれたわね。奈津から聞いて、ずっと待っていたの」
「……母さん」
「さあ、聞かせてちょうだい。少しは奈津から聞いているけど、その後どうしたか心配していたの」