ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない

 「とりあえずは、契約結婚にうなずいてもらうことが目的だ。うなずいてもらえばこちらのものだと思っていい。百合の人柄や実力はわかりきっている。後はマスコミ対策だな。それは別途考えた方がいいだろう。マスコミの知り合いに手を回してもらうか。百合のお父さんには本当の結婚だと思わせておいていいだろう」

 「父のことは私に任せて下さい。実は昨日直接連絡して少し話しました。私から連絡したことがなかったので驚いていました。父は黎とのお付き合いを喜んでいました。黎は有能な御曹司で将来有望だと褒めていました。私が彼と結婚できるならお父様を説得してもいいとまで言ってました」

 三人は驚いて百合を見ていた。黎は彼女の方を向いて、手を握った。

 「……百合。ひとりで色々やり過ぎだ。何かあったらどうする気だったんだ。心配させるなよ」

 百合はにっこりと笑った。

 「私が出来ることや私に関わることは自分で片づけます。それでなくても私のことが今回の原因です。頑張るから見ていて、黎」
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