ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない

 きっぱりと言い切る彼女を要はじっと見つめた。

 「父さん。彼女の仕事は俺が中心になって考えていく。現状オファーが結構来ているらしい。海外のほうもある。向こうの支社でそれが宣伝に使える可能性もある。十分ありがたい話だ。スキャンダルについては結婚ということでもみ消しをマスコミの知り合いに頼むつもりだ。百合の父親も力になってくれるだろう」

 「黎。お前、俺が彼女を認めると頭から思っているな。俺が認める認めない以前に、彼女が想像以上に忙しい社長夫人としての仕事とピアノを両立出来るかまずそれが問題だということに気付いてないだろ?」

 「彼女を守るのが俺の役目だ。父さん、俺を見くびるなよ。社長夫人としての仕事など俺がどうとでもしてやる。何してもいいんだろ?会社をきちんと継ぐと約束している限り、俺に任せてくれるんだよな?」

 要は息子の挑戦的な目に、何も言い返せなかった。黎がやるといったら必ずやるのをこの五年で嫌というほど見てきた。

 「お手並み拝見といこうか。黎、そして栗原さんあなたもね。栗原さんのお父さんへの説明はどうする気なんだ」
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