ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない

 「ああ、久しぶりだな。卒業以来会ってなかった。元気そうだし、立派になったな。今日はチケットをありがとう。料金の代わりといってはなんだが、この商品券良かったら使ってくれ」

 胸ポケットから商品券の箱を出して、神楽に渡した。

 相変わらず気が回る男だと神楽は嘆息した。

 「……別に良かったのに。知り合いなんだから、奢られとけよ」

 「いや、いいよ。今後チケットが取れなかったら君に頼りたいからね。ここは恩を売るのが正解だ」

 黎は神楽を見て笑った。

 「栗原さんの楽屋はそこ?」

 「ああ」

 「君がマネージャーとは驚いたよ」
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