ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない

 「ありがとう。そうさせてもらうよ。栗原さんは今いいかな?」

 神楽はドアをノックする。

 「はい」

 「百合、堂本君が来たけど、大丈夫?」

 「ええ。入って頂いて大丈夫です」

 神楽は黎に場所を譲った。
 一緒に入りたかったが、そうさせない雰囲気を黎が醸し出している。
 
 「失礼します」

 そう言って、仕立てのいい三つ揃いのスーツに身を包んだ黎が入っていった。
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