ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない
ハネムーン
「おい、百合。どこへ行った?」
黎は起き上がると声を上げた。
彼女を抱き寄せようと腕を伸ばしたが冷たいシーツが手に当たっただけ。
びっくりして、隣を見ると彼女の姿がない。
生温かい空気が寝室を駆け抜ける。ここは沖縄だ。
お披露目を終え、母のはからいで父も百合との結婚を認め、契約書は破棄し、契約結婚ではなくなった。
母がいるうちに結婚式を挙げておこうという話になり、急遽結婚式を親族のみで行った。
結婚式の誓いのキスで、普段冷静沈着な黎が我を忘れるという人生二度目の経験をした。
一度目は彼女から別れを告げるメールをもらったとき。
二度目はお互いに誓いの言葉を述べて、キスをしようとヴェールをあげたその時だった。