ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない

 すぐに外へ一緒に出かけたがる彼女を寝室へ引っ張って、面倒だから動けないようにしてしまった。

 それから丸三日経った。さすがに彼女も機嫌が悪くなってきた。
 そろそろ観光へ行くかと考えていたところだった。

 夕べは彼女に酒を飲まされて、気付いたら寝てしまっていた。
 今思えば、彼女の作戦だったのだろう。

 「……しょうがないな。どこへ行ったんだ?方向音痴の癖して」

 百合は出かけると、気ままにどんどん行ってしまう。前よりはひどくなくなったが、新しいものを見ると子供のようになる。手を繋いでいるのも、一人で行ってしまうことがいまだにあるからだ。そして、方向音痴。よって迷子になる。

 黎は急いで身支度をして、周りを見ると、靴とバッグ、携帯電話も置きっぱなしだ。
 外へ出ていないのかと思って、バスルームなどを見に行ったがいない。
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