ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない
神楽は久しぶりに会った堂本黎の男っぷりに当てられてどっと疲れた。
百合が心配でならなかった。
いくらウブだとはいえ、こんな黎を意識せずに彼女がいられるのか。
百合には今までは男の影がまるでなかった。
マネージャーとしてはプライベートもある程度は把握管理が必要だ。
ドアをにらむように見つめる神楽だった。
「栗原さん。今日はチケットありがとう。とても素晴らしい演奏でした」
振り向くと、仕立てのいいスーツを着こなした黎が立っている。
大きな花を手渡された。珍しい花束。白の花がほとんどで、黄色の花が間を埋めている。
百合はじっと花を見つめた。