ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない

 見ていると不思議な気持ちになった。ニュートラルに戻れる感じというか、白がそういう気持ちをリセットする作用があるのかもしれないが、黄色がそれを元気づけてくれる。

 「ありがとうございます。素敵な色合い。はじめて頂きましたが、とても気に入りました」

 「そう。それなら良かった。僕の君へのイメージと応援を込めて選んでみた」

 わざわざ自分のために色を選んだ?花を?この人は私の心を知っているのかしら?まじまじと彼を見つめた。
 神楽とは違う、何かオーラのようなものが彼の周りを漂っていることに百合は初めて気付いた。

 「ありがとうございます。褒めて頂けて嬉しいです。今日は堂本さんにお礼のつもりでしっかり演奏させていただきました」

 「え?」

 百合はにっこりと微笑んで黎を見ながら言う。
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