ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない

 耳元で言うと、また恥ずかしそうにしている。可愛くて食べたいくらいなのに、浮気なんかするわけない。
 
 ピアノを弾いている彼女の姿にも惹かれている。全く分かってないのは、どっちなんだ。

 ホテルについて、部屋へ戻ると百合がお願いを聞いて欲しいと言う。

 「今度はなんだ?」

 「今度って。そんなにお願いしてないわよ。あのね、そろそろ一度ピアノに触りたいの。ホテルのカフェにあるピアノを弾かせてもらったらだめかしら?」

 「百合。君はプロなんだぞ。無料であんまり弾いたらだめだ。沖縄にあるピアノのある貸しスタジオでも探すか……」

 「え?そんなつもりじゃないわよ。少しでいいの……二曲か三曲弾かせてもらえたら十分よ」

 「わかった。ホテル側と交渉してみるよ。君さえよければティータイムコンサートにでもするか?少しだけお金を取ってね」
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