ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない

 「そんなことしていいの?」

 「だから、俺が聞いてみるんだよ。客が来ないならやる意味ないしな。ホテル側の意見を聞いてみよう。そうと決まったら、百合はすぐに奈津へ連絡してリサイタル用のドレスとか靴やアクセサリーを送ってもらえ。早ければ明日着くようにしてもらえよ」

 「ええ?!黎、本気なの?」

 「百合は、俺を誰だと思ってる。さっきも言ったが、俺はやると言ったらやるんだよ」

 「……わかりました。言い出したのは私だもの。奈津さんに連絡します」

 黎はそのままホテルのフロントへ行ってしまった。
 百合は部屋へ戻って、奈津に電話したのだった。

 さすがに翌日までにドレスは届かなかった。
 黎が支配人と話したところ、どうせなら一番大きな広間を使ってコンサートをしたいと提案された。
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