ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない
できれば宣伝をして、集客することを考えると、黎達が帰京する予定の三日後の最終日にと言われた。
そして、あまりピアニストが来ることもないのでおそらく話題になるだろうと言われた。
支配人の言うとおり、地元のラジオやテレビ、口コミで話が広がり、チケットはあっという間に売り切れた。
入りきらないので、昼と夜の二公演させてくれないかと頼まれて、結局東京へ戻るのはその翌日の朝の便になってしまった。
百合のドレスも一公演を見込んで、奈津から一セットしか入れていなかったので、もう一セット急遽送ってもらった。
結局二公演になったことを父に話したら、何しに行ったんだと呆れて言っていた。でも、早速嫁として活躍してくれて、いいことだと喜んでいた。
せっかく百合を独り占めするはずのハネムーンが、後半三日間ピアノに取り上げられた。結局、練習だのリハーサルだの言って、照明や音声の打ち合わせにも一緒に入って、父の言うとおり、何しに来たんだと自分でも嫌になった。
「百合。今回だけだからな。今後は絶対に旅行先で、人前でピアノを弾かせないことにする」