ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない

 「もう。何なの、黎。私はだからピアノを少し借りるだけでいいって言ったのに。コンサートとかもちかけたのは黎じゃない」

 「うー。こんなことになるとは思っていなかった。俺も馬鹿だった。何のためのハネムーンだよ」

 「でも、お礼にって今日のディナーはホテルが特別なのにして下さるって言ってたでしょ。楽しみよ」

 「そうじゃないよ、夜の公演はディナーショー形式にするらしい。フレンチのフルコースとコンサートを一緒にするんだよ。だから、そのフレンチを先に俺たちだけに食べさせてくれるんだ」

 百合はあっけにとられて口を開けていた。

 「そ、そうだったの。知らなかった。ディナーショー?そんなこと出来るの?」

 「ホテルの宣伝にするらしい。結婚式をこのメニューでとかそういうことだよ」
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