ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない
「私達、利用されてるんじゃないの?」
「まあ、収益は六割ウチに入る。堂本との今後の取引も希望するならそれは譲れないな」
「……黎ったら。結局あなただって利用してるじゃない。はあ。私なんのために弾くんだっけ?」
「自分で弾きたいって言ったんだぞ。というか、ハネムーンは今度の長い休みに海外でも行ってやり直しするからな」
「もう、好きにして。私はとにかくきちんと弾くことに集中したいわ」
大きなため息をつく百合を見て、黎もため息をついてしまう。
とんだハネムーンになってしまった。
しかし、公演は大成功。沖縄で別日程での公演をオファーされて、結局受けてしまった。
しかも、ディナーショーに他県から来ていた複数の財界人や議員などが自分の地元でもコンサートをやって欲しいと言う。
結局他県からのオファーもあり、のちほど連絡することになってしまった。
百合をどんどんピアノの公演で取られていく。黎は父の言っていた意味がやっとわかりかけてきた。
ピアノを弾く時間がないと百合が悩むのではなく、自分が百合をピアノに取られてイライラするのだった。
ピアニストだった百合を好きなはずが、ピアノと百合を取り合う羽目に陥ってしまっていた。