ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない

四角関係

 あの沖縄から半年。

 結局、あれ以降もリサイタルに彼女を取られて、自分も仕事が入り、念願の海外へのハネムーンは未だに行っていない。それどころか、最近は彼女が地方へ行くこともあり、留守が多い。
 
 「で?結局、百合をピアノに取られたとか言うんじゃないだろうな?堂本、お前変わったな……ははは」

 神楽は目の前で口をとがらしてふくれている黎を見て、笑ってしまった。
 
 どんなときもクールだった堂本が、百合のこととなると感情むき出しで饒舌になる。

 百合が彼と契約結婚することを最後まで反対していたが、あっけなく堂本社長が陥落して、無事契約は破棄し、正真正銘ふたりは夫婦となった。
 
 それにここまで百合を溺愛している姿を見ると、変な話だが彼女も逃げられないし、彼女を奪うこともできなかっただろうと諦めもついた。
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