ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない
 
 元々、黎の同級生で友人、さらに妻の担当マネージャーだったということもあり、信用されたらしい。
 
 神楽は先に立ち上がって帰って行った。

 黎はひとりでタクシーに乗って、家へ帰ってきた。
 今日は百合が本邸に戻ってくる日だ。昨日まで北海道公演だった。彼女に会うのは三日ぶりだ。

 夜の飛行機だったので、空港へ迎えに出ている柿崎と一緒に戻ってくる頃だった。
 しかし、帰ってこない。父や母、奈津も心配し出した。

 運転中かもしれないと思ったが、思いきって連絡をする。すると、柿崎から今通話が出来ないので、出来るところに行き次第連絡すると書いてある。百合はどうしたと聞いたら、合流しましたとだけ返事が来た。

 渋滞でもしているんじゃないかと父が言うので、そうかもしれないなどとのんきに構えていたが、柿崎からの電話でひっくり返った。
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