ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない

 「黎様。落ち着いて聞いて下さい。奥様が途中で具合が悪くなって、羽田近くの病院へ来ています。それで通話できなかったんです」

 「なんだと?!百合は大丈夫なのか?」

 「それがですね。私からお伝えしていいのか……」

 「なんだ、もったいぶって今更。医者に何か言われたのか?」

 「あ、お待ちください。奥様、こちらです」

 柿崎が百合を呼ぶ声がする。電話を百合に替わった。

 「あ、黎?ごめんなさい。心配してた?」

 「百合、どうしたんだ、大丈夫なのか?」
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