ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない

 「そうなの。赤ちゃんの心臓がお腹で動いているのが見えたの。ドクドクって音がしてるのよ。でね、めまいは貧血だったの。妊娠のせいだった」

 「……百合。帰ってこられるのか?無理ならそっちへ今から行くから病院かホテルにでもいろ」

 「ううん。今日は帰りたいの。疲れてしまって、ホテルとか嫌なんだもん。吐き気止めの点滴してもらったから帰るわ」

 「わかった。気をつけろよ。柿崎に代わってくれ」

 「黎様。おめでとうございます」

 「ああ。ありがとう。柿崎は奈津がこの間子供産んでいるから妊娠に詳しいだろ。百合を頼むよ。気をつけて帰ってきてくれ」

 「はい。ゆっくり帰りますので、お待ちください」

 「ああ。気をつけてな」
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