ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない

 電話を切ると、後ろで母が立っていた。

 「黎。百合さん、妊娠したのね?」

 「ああ。二ヶ月だったそうだ……めまいを起こしたらしい」

 紗江子は黎の手を取った。
 
 「黎。おめでとう。良かったわね。大事にしてあげないと。リサイタルや社交会も彼女はしばらくお休みさせましょう」

 「ああ。母さんに任せてもいい?体調は大丈夫?」

 「ええ。最小限しか出席しないわ。今まで、百合さんが色々やってくれたしね。ああ、良かったわね、本当に」

 「……」

 「黎?どうしたの。嬉しくないの?」
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