ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない

 「いや。もちろん、嬉しいよ」

 後ろから要が顔を見せた。黎に向かって笑って言う。

 「黎。お前、俺の言っていたことが分かってきただろ。百合さんは結婚してからすぐにピアノがまた忙しくなり、次は子供だ。お前のことが一番後回しになるんだよ」

 「あなた。どうしてそういうことを言うのかしら。黎、気にしちゃダメよ。父親になるんだから、当たり前のことですよ。なんだかんだ言ったって、百合さんのお腹の子は黎の子供なんだから、彼女はあなたのものなのよ」

 「……」

 二時間後、百合が戻ってきた。
 顔色が悪い。すぐに寝室へふたりで入った。

 黎は百合のお腹をじっと見つめた。
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