ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない
「お腹の子供はいずれ外に出てくるんだよ。隠れているうちは俺のことだけ考えてろ。せっかくリサイタルもなくなるし、毎日俺の側にいるんだ」
黎は百合を抱きしめ直す。
「……まさか、黎。もしかして、寂しかったの?」
「……」
「ふふふ……」
「寂しいわけじゃない!百合は沖縄から帰ってきてからどんどん忙しくなって夜も練習して疲れてすぐに寝てしまう……何のためにお前を妻にしたんだ。お前を独り占めするためだったのに……」
百合は子供のように自分への気持ちをぶつける黎を初めて見た。そして、可愛くてならなかった。
つい、頭を撫でてしまった。