ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない

 百合は鞄から大小ふたつの袋を取り出した。

 「これ、マフラー。一応、急ぎでホテルのほうへクリーニングを頼んで上がってきたので綺麗にはなっていると思います。大切な品をお貸し頂きありがとうございました。あと、これはホテルの紅茶です。この間アールグレイ同じ銘柄頼まれましたよね?私、このアールグレイが大好きなんです。あの紅茶よりも味わいがあるのでよろしければ飲んでみて下さい」

 彼女は彼にそれを差し出した。

 「ああ、ありがとう。紅茶は楽しみだよ。気を遣わせて悪かったね」

 そう言って、彼女から受け取ったその袋を鞄にしまうと、中から違う箱を取り出した。
 綺麗なピンクのリボンがかかっている。

 「代わりにこれをどうぞ」

 そう言って、彼女に箱を渡す。
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