ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない

 「……あの。私、演奏会前はそのことで手一杯になったりして、メールのお返事がすごく遅くなったり、電話も返すことが出来ないこともあります。友達はそれに呆れて離れた人もいるくらいです。それでもいいの?」

 こわごわと聞いてくる。可愛い。そんなの俺の方が常習犯だ。

 「全然問題ない。それこそ、俺もしょっちゅう忙しいと放置してる。でも、君からの電話やメールなら俺は必ず返すから君が返事くれなくても切れることはないから安心して」

 「それってどういう?」

 「とにかく、教えてくれる?日本でも君が暇なとき一緒にお茶を飲みたいんだ」

 お茶を飲むの?百合は不思議な友達だと思ったが、とりあえず恩もあるし、神楽の友人だし、大丈夫だろうと携帯の番号やアドレス、アプリを交換した。

 黎は満足した。これでいい。やっとスタートに立てた。想像以上に大変だったが……。
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