ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない

新たな事業

 
 日本へ帰った黎は、空港へ迎えに出てきた秘書兼運転手の柿崎にズバリ切り込まれた。
 
 柿崎は黎より四つ年上だが、そう年は違わない。長く家に仕える一族だ。小さい頃から一緒にいた。幼馴染みのような、家族のような存在だ。彼は最近実家の家政婦の女性と結婚したばかりだ。

 「黎様。何かいいことがありましたか?」

 「え?」

 「今までになく嬉しそうです。そんなお顔久方ぶりに見ましたよ」

 「そうだな。向こうで偶然コンサートに行って、良い演奏を聴いたんだ。心が洗われた」

 「それは良かったですね。それだけですか?」

 「何だ?」
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