ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない

 黎はソファで前のめりになり、父に向き直った。

 「音楽プロダクションの後ろ盾となって、コンサートを協賛するんです」

 「は?何の話だそれは?」

 「クラシックなどのティータイムコンサートのようなものをそういった社交に使ってもらうんです。うちが出資したプロダクションを使って演奏させて。文化事業にも熱心だというイメージがつきますし、女性客もあらたに付くかもしれない。広告もコンサートごとに載せてもらえば宣伝になる。いずれ、コンサートホールを堂本の名前で作ることが私の希望ですが、それはおいといて、どうですかね?」

 黎の父は、息子が母の影響でクラシック好きなのはわかっていた。だが、そういった習い事は一切させずにきたせいで、彼がそういうものをより求めるようになったのはしょうがないと諦めていた。

 まさか、それを仕事に絡めてくるとは思わなかった。
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