ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない
 
 だが、今の話は非常に興味深く、自分が絶対に思い付かない内容だった。
 社交には最適かもしれない。それだけでなく、今までとは違う方向性なので客層が増える可能性もある。

 息子をじっと見つめる。何か考えがあるのだろう。息子は非常に頭がいい。
 
 自分よりも正直優秀かもしれないと会社に入れて最初の仕事を任せたときに気付いた。驚いたのだ。周囲も黎の素質を手放しに褒める。おべっかでないのはその成果をみればわかるのだ。

 「黎。それはいい考えかもしれん。俺には思いつかないし、お前がそういったことを好きだから思いついたんだろうが、着眼点がいい。社交にもいいし、宣伝になり、新しい顧客層の開拓に繋がりそうだ」

 黎は父を口説き落とすのに、色々考えていたが、あっけなく陥落して少々驚いた。

 「ありがとうございます」

 「で?お前のことだから、何の当てもなく俺にこんな提案するわけがない。何かそのプロダクションとやらに当てがあるのか?」
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