ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない

 彼女は少し考えていたが、にっこり笑ってうなずいた。

 黎は彼女をエスコートしてカフェまで案内した。

 カフェへ入ると、向かい合って座った。
 お互い何故か同じ銘柄のアールグレイの紅茶を選んだ。

 「……あ、美味しい。身体が暖まるし、手も温かくなったわ」

 両手でカップを持って手を温めている。
 白い綺麗な手に目を奪われた。

 正面から彼女の顔をしっかり見て初めて気付いたが、どこかで見た気がする。

 黎は少し考えたが思い出せない。美人だし、会ったことがあるなら忘れないと思うのだが、何だろうと考えた。
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