ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない

 黎は姿を見せた神楽を、笑顔で迎えた。

 「いや、こちらこそ今回はいい話をありがとう。さすが、堂本。いい店だな。驚いたよ」

 会席料理の店だが、少し大通りを入ったところにある。
 銀座なのだが、地下へ入るのでだれも気付かないだろう。
 おそらく一見さんお断りに違いないと神楽は思った。

 「とりあえず、ビールでいいか?乾杯しても大丈夫か?」

 女将が来たので、掘りごたつへ腰を下ろす神楽に聞く。

 「ああ。今日はもう大丈夫だ」

 黎がうなずくと女将は何も言わず笑顔で出て行った。
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