ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない
「あの……イギリスにはお仕事か何かでいらしたんですか?」
「……え?あ、そう。仕事とプライベートの用事をかねて来ているんだ。君は?」
「私は、演奏会で来ています。それも、仕事ですね」
「演奏会が仕事?もしかして……」
黎は彼女の顔を見て、思い出した。そうだ、昨年の日本の音楽コンクールの受賞者の中に彼女を見た気がする。
「……ピアニストなんです。駆け出しですけど」
「君、去年日本で九月に開催された音楽コンクールの受賞者だよね?見たことあると思ったんだ」
黎が身を乗り出して話す。彼女はびっくりしたのか、黎を見つめていた。