ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない

 「そうです。よくご存じですね?すみません、関係者の方でしたか?私、よく覚えてなくて……」

 黎は目の前で手を左右に振って否定した。

 「いやいや、関係者とかじゃないから安心して。音楽が好きでね。良くチェックしているんだ。確か、チャイコフスキーのコンチェルト弾いていたよね」

 「ええ。よく覚えていらっしゃいましたね。あ、私は栗原百合です。ご記憶と合ってます?」

 「もちろん。こんな美人だしどこかで見たと思ったんだ。知り合いかとも思ったけど、なんか違うと思ってね。君のピアノを弾いている横顔しかあまり記憶になくて、思い出すのが遅れたよ」

 百合は恥ずかしそうに首まで赤くして下を向いた。
 照れてるのか、可愛いな。
 黎は彼女のそんな姿に胸を打ち抜かれた。
< 7 / 327 >

この作品をシェア

pagetop