ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない
「そうです。よくご存じですね?すみません、関係者の方でしたか?私、よく覚えてなくて……」
黎は目の前で手を左右に振って否定した。
「いやいや、関係者とかじゃないから安心して。音楽が好きでね。良くチェックしているんだ。確か、チャイコフスキーのコンチェルト弾いていたよね」
「ええ。よく覚えていらっしゃいましたね。あ、私は栗原百合です。ご記憶と合ってます?」
「もちろん。こんな美人だしどこかで見たと思ったんだ。知り合いかとも思ったけど、なんか違うと思ってね。君のピアノを弾いている横顔しかあまり記憶になくて、思い出すのが遅れたよ」
百合は恥ずかしそうに首まで赤くして下を向いた。
照れてるのか、可愛いな。
黎は彼女のそんな姿に胸を打ち抜かれた。