ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない
美味しい料理が運ばれてきた。
あれ以降回った海外のリサイタルのはなしなどをして、和やかに食事をした。
そろそろデザートというときに、切り出した。
「神楽から聞いているかも知れないけど、そちらの事務所に出資する方向でうちの会社が今検討中なんだ」
百合はフォークを持つ手を下ろした。そして、彼を見る。
「……少し聞いています。何のためですか?」
じっとこちらを見て切り込むように聞いてくる。
「神楽からその説明はなかったの?」
「ありましたけど。なんで、急に?」