ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない
探るような目でこちらを見てる。
「……君のリサイタルを聴いて、支援したいと思ったから」
「神楽さんから聞いた感じではそちらの会社の宣伝や社交の場として利用したいという話でしたよね?私の支援とか関係ないでしょ?」
ちょっと怒って答えている。黎は驚いた。
「栗原さん。それは違うよ。純粋に出資したいと思ったのは、本当に君のリサイタルを聴いて、多くの人に君のピアノを聴いてもらえたらと考えたからだよ。それを疑われるのは心外だ」
黎も少し語気を荒げて答えた。百合は驚いている。
「……ごめんなさい。そんな、怒らないで。理由のひとつに私が入っているのは正直光栄です。ただ、そちらの会社のために私のリサイタルが役に立つのか、長期の見通しが立つのか、不安だったの。まあ、この事務所には大勢のソリストがいますし、私だけではないでしょ?」