ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない
紅茶を飲みながら窓の外を眺める横顔が寂しそうだった。
「栗原さん。君のやりたいと思っているリサイタルを今度具体的に俺に聞かせてくれる?」
「え?」
「だから、君の希望を聞いて、出来る限りそれを実現できるようにフォローするのが出資者の出来ることだよ。事務所のいいなりにならず、やりたいことが出来るように、君を支えたい」
百合は黎を大きな瞳を見開いて驚いて見つめている。そして、嬉しそうに微笑んだ。
「……嬉しい。嬉しいです。ありがとうございます」
黎は百合のキラキラ光る瞳を見つめていると彼女に吸い込まれそうな錯覚を覚えた。
「じゃあ、友達になってくれるよね?知り合いから昇格してもいい?」