ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない

 「堂本さんって、おいくつなんですか?」

 「二十七歳だ」

 「お若いのに、よく色々音楽のことも美術のこともご存じですね。お好きだから?」

 「そう。音楽も君のことも好きだからね」

 黎はつい、口を滑らせた。はっとして、彼女を見ると笑っている。

 「もう、冗談がお上手ですね。音楽と私が同列なのは光栄です」

 そう言って、すぐさま冗談にされてしまった。黎は、異性として全く意識されていないと思い、がっかりした。

 いつ頃、美術館に行くかふたりでスケジュールを相談した。
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