ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない
やっと友達か……考えると笑ってしまった。友達になるのに、こんなに苦労するなんて、恋人になるには逆立ちしてもダメかもなとひとり想像して苦笑いしてしまった。
男性に対して、構えているようにも見える。
音楽一筋で生きてきたのだろうし、男性経験がなさそうなのは最初からわかっていた。だから、強引にいっても引かれるだけだと思い、彼女のペースを守るつもりだ。
そういう黎自身、男女交際のテクニックなど皆無だ。
何しろ、何もしなくても寄ってくる女性達を掃除するのに忙しく、自分から行くことなど一度もなかった。実は百合とそう変わらないのだ。
彼女と知り合ってから黎は毎日が楽しくて仕方がなかった。自然と笑顔が毎日出ているので、仕事も想像以上にうまくいく。