ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない
side 黎
栗原百合は最初全く俺を男として意識していなかったと思う。
とにかく、友達から昇格しないとどうにもならない。
美術館へ誘ったのはデートのつもりだが、本人はいたって勉強のためという風だった。
俺に会うからといって、特別おしゃれしてきたというわけでもない。
ロングスカートに淡いピンクのカーディガン。髪は肩より少し長いくらいだが、今日は珍しく下ろしている。
「今日は、何かオフって感じだね」
百合は自分の姿を左右に目をやって見ながら、首をかしげる。
「そうですか?あれ?堂本さんってどんなときにお会いしてましたっけ?」