ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない

 おいおい、まだ今日は三回目だよと言うと、ふーんと言う。

 やっぱり、意識してないなと呆れる。

 女性にこんな扱いを受けるのは、正直初めてだ。彼女といると自信がなくなる。

 「今日は楽しみにしてました。よろしくお願いします」

 「ああ。こちらこそよろしく。じゃあ、入ろうか」

 そう言って美術館へ入ると絵の前に行き、じーっと見つめては、ぼーっと何かを考えている。

 次の絵を見にふらふらと隣へ移動する。何が困るって、俺の存在を忘れていること。

 頭にきたから放っておいた。
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