ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない
部屋を変わるときに俺のことを思い出したのか、キョロキョロしながら探しに戻ってきた。
そして、俺を見つけるとこれまた子供のように嬉しそうに走ってくる。
周りを見ずに走ってくるから誰かにぶつかって謝っている。とにかく目が離せない子供のようだ。
「ごめんなさい。一人で先に行ってしまって」
「俺のこと、すっかり忘れてただろ」
「ごめんなさい。私って、何かに夢中になると他がおろそかになるの。前から母や友人に注意されていたんだけど、相変わらずで……」
恥ずかしそうに下を向いて謝りながら話す。下を向いていたので、頭を撫でてやる。本当に子供だな。
「え?」