ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない

 「小さな子供みたいだぞ。しょうがないから、手を繋いでやる。ほら」

 手を出すと、俺の手をじっと見つめて、今度は顔を見る。そして、真っ赤になって、そろそろと手を出した。

 捕まえるように手を握る。細い指が折れそうだ。これであんなに難しい曲を弾いているのかと驚いた。

 「あの。堂本さんは絵が好きなの?」

 「そうだな。絵も見るだけなら好きだよ。音楽と一緒でね、自分では出来ないから見るだけだな。君は実は絵もうまいんじゃないか?」

 「うまいかというとそれは違うけど、描くのは好きよ。昔近所に猫がいて、その子をよく描いていたわね」

 「猫なら、俺も描けそうだな」
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