ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない

 「あら。じゃあ、あとで描いてみる?どっちがうまいかしら?ふふふ……」

 そう言って笑う。彼女の鼻の頭を人差し指でつついてやる。

 「あ、馬鹿にしたな?俺の方がうまかったら、ひとつ俺の言うことをきいてもらうからな」

 「いいわよ。後でね」

 そう言って、人差し指を口の前に立てて、しーっと言う。美術館だったことをすっかり忘れて話し込んでしまった。
 昼頃に丁度見終わって、美術館の近くのフレンチレストランへ行った。

 「展覧会にちなんだメニューなどがあるんだよ。面白いよね。このコースにしてみようか」

 「あら、コースにそういうのがあるんですね。すごいわ」
 
 「そういえば、勉強出来た?」
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