ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない
彼女の手を自分のほうへ引き寄せ、もうひとつの手で叩いてやる。彼女の顔を見ながら言う。
「君は今、俺の連れだからね。いいんだよ。百合、君は今日俺のものだから……」
「え?ええ?」
目を白黒させつつ引きずられるように歩く彼女の顔をほくそ笑んで見つめる。
本当に可愛い。そして、退屈しない。こんな面白くて可愛いものを他のやつにやるもんか。
彼女を見る男どもの目も多い。それには自分で気付いてないところも困ったものだ。
「百合さん」
「はい」