ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない

 「そうね、勉強になりそうだわ。黎さん、先回りしてすごいわ。私、オペラなんて学校で見に行って以来よ」

 そう言って嬉しそうにこちらを見上げた。

 翌週。今度のオペラは少し良い席だから、おしゃれしておいでというと、電話から困った声がする。

 「どうした?」

 「私、リサイタル用のドレスくらいしか、おしゃれな服って持ってなくて……」

 「それなら、行く前に服を調達して着替えていこう」

 当日、セレクトショップへ立ち寄り、着替えさせた。やはり、薄いピンク色が好きなんだな。自分で選ぶとすぐにそういう色になる。
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